2025年12月19日、政府与党から令和8年度(2026年度)税制改正大綱が発表されました。今回の改正では、防衛力強化のための財源確保を目的とした「防衛特別法人税」の創設が最大の焦点となっています。
この記事では、企業経営者や個人事業主の皆さまが知っておくべき改正内容を、わかりやすく解説していきます。
防衛特別法人税とは何か
防衛特別法人税は、法人税に上乗せされる形で課税される新しい税制です。日本の防衛費を安定的に確保するため、2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。
税額の計算方法
この税制の計算式は以下の通りです。
防衛特別法人税額 = (基準法人税額 – 500万円) × 4%
ここで重要なのは、基準法人税額から500万円を控除できる点です。つまり、基準法人税額が500万円以下の企業には課税されません。これは中小企業への配慮措置となっています。
具体的な計算例
- 基準法人税額が400万円の場合:税額0円(非課税)
- 基準法人税額が600万円の場合:(600万円 – 500万円) × 4% = 4万円
- 基準法人税額が1,000万円の場合:(1,000万円 – 500万円) × 4% = 20万円
多くの中小企業は、課税所得が約2,400万円程度までであれば、基準法人税額が500万円以下となり、実質的に非課税となる見込みです。
適用開始時期と申告
- 適用開始: 2026年4月1日以降に開始する事業年度
- 申告期限: 法人税と同じく、事業年度終了後2ヶ月以内
- 中間申告: 2027年4月1日以降に開始する事業年度から必要
決算期別の初年度適用例:
- 3月決算法人:2026年4月~2027年3月の事業年度から適用(初申告は2027年5月末)
- 12月決算法人:2026年12月期から適用(初申告は2027年2月末)
企業への影響
法人税の原則税率は23.2%ですから、防衛特別法人税により実効税率は約1%程度上昇することになります。東京都の大企業の場合、実効税率は従来の約30.6%から約31.5%程度に上昇する見込みです。
会計処理上の注意点
税制改正大綱の公表日(2025年12月19日)を含む事業年度から、繰延税金資産・負債の算定に新しい実効税率を反映する必要があります。3月決算法人の場合、2025年3月期の決算から新税率での調整が必要になります。
防衛特別所得税について
法人税に加えて、個人の所得税にも防衛財源確保のための税制措置が導入されます。
導入時期と内容
- 開始時期: 2027年1月から
- 税率: 所得税額の1%
- 課税期間: 「当分の間」(終了時期は未定)
復興特別所得税との関係
防衛特別所得税の導入と同時に、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられます。このため、単年度の税負担は当面変わりません。
ただし、復興特別所得税の課税期間が2037年末から2047年末まで10年間延長されるため、長期的には税負担の総額が増加することになります。
中小企業支援策の拡充
増税措置だけでなく、中小企業を支援する税制も強化されています。
少額減価償却資産特例の拡大
青色申告を行う中小企業等が取得する少額減価償却資産について、即時償却できる上限額が引き上げられます。
改正内容:
- 現行: 取得価額30万円未満
- 改正後: 取得価額40万円未満
- 適用開始: 2026年4月1日以降に取得した資産
- 年間上限: 300万円(変更なし)
- 適用期限: 2029年3月31日まで延長
この改正により、30万円台のパソコンや事務機器なども、購入した事業年度に全額経費計上できるようになります。近年の物価上昇により、30万円未満に収めることが難しくなっていたことへの対応です。
注意点: 常時使用する従業員数が400人を超える法人は、この特例の対象から除外されます。
基礎控除の引き上げ
所得税の基礎控除額も引き上げられます。
- 現行: 48万円
- 改正後: 合計所得金額2,350万円以下の個人は最大62万円
- 適用開始: 2026年分の所得税から
給与所得控除の最低保証額も引き上げられ、いわゆる「年収の壁」が実質的に引き上げられます。
特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
国内での大規模かつ高付加価値な設備投資を促進するため、新しい投資減税制度が創設されます。
主な内容
青色申告法人が、一定の要件を満たす「特定機械装置等」を取得して国内事業に供した場合、以下のいずれかを選択できます。
- 即時償却: 取得価額全額の特別償却
- 税額控除: 取得価額の7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)
税額控除の場合、控除上限は当期法人税額の20%ですが、予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応する計画について認定を受けた場合、控除限度超過額を3年間繰越すことができます。
対象となる投資
- 投資計画の設備取得価額合計:35億円以上(中小企業等は5億円以上)
- 年平均の投資利益率:15%以上の見込み
- 経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づくもの
企業が今すぐ取るべき対応
1. 影響額のシミュレーション
自社の基準法人税額を確認し、防衛特別法人税の影響額を試算しましょう。基準法人税額が500万円を超える見込みの企業は、キャッシュフロー計画に織り込む必要があります。
2. 繰延税金資産・負債の見直し
2025年3月期決算から、新しい実効税率で繰延税金資産・負債を再計算する必要があります。経理担当者や税理士と早めに相談しましょう。
3. 設備投資計画の検討
少額減価償却資産特例の上限が40万円未満に拡大されるため、2026年4月以降の設備投資計画を見直すことで、節税効果を高められる可能性があります。
4. 役員報酬の最適化
法人税と所得税の両方が増税となるため、役員報酬の水準を見直す際には、社会保険料も含めたトータルコストを考慮する必要があります。
よくある質問
Q1: 中小企業は本当に影響を受けないのでしょうか?
A: 基準法人税額が500万円以下であれば防衛特別法人税は課税されません。ただし、事業が成長して基準法人税額が500万円を超えると課税対象となります。また、繰延税金資産・負債の算定には新税率を使う必要があるため、会計処理上の影響はあります。
Q2: 会計処理はいつから変更が必要ですか?
A: 税制改正大綱の公表日(2025年12月19日)を含む事業年度から、繰延税金資産・負債の算定に新しい実効税率を適用する必要があります。3月決算法人であれば、2025年3月期決算から対応が必要です。
Q3: 防衛特別法人税に終了時期はありますか?
A: 「当分の間」課税されることとされており、明確な終了時期は定められていません。恒久的な措置となる可能性が高いとされています。
Q4: 少額減価償却資産特例は、いつまで使えますか?
A: 2029年3月31日までに取得した資産が対象となります。ただし、この特例は過去にも延長されてきた経緯があるため、今後も延長される可能性があります。
まとめ
2026年の税制改正は、防衛特別法人税の創設により企業の税負担が増加する一方で、少額減価償却資産特例の拡充や新たな投資促進税制の創設など、中小企業支援策も強化されています。
重要なのは、これらの改正内容を正しく理解し、自社の状況に合わせた対応を早期に検討することです。特に以下の点は早めの対応が推奨されます。
- 2025年3月期決算からの繰延税金資産・負債の見直し
- 防衛特別法人税の影響額シミュレーション
- 設備投資計画の見直し(40万円未満の特例活用)
- 役員報酬の最適化検討
税制改正は複雑な内容を含むため、具体的な対応については税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
参考資料・引用元
- 自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」(2025年12月19日公表)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_06.htm
- 税理士法人山田&パートナーズ「速報 2026年度(令和8年度)税制改正解説」 https://www.yamada-partners.jp/tax-topics/yp-ycg-zeikai2026
- EY税理士法人「令和8年度税制改正大綱(詳細版)」 https://www.ey.com/ja_jp/税制改正
- freee「防衛特別法人税とは?2026年から適用される新税制の概要・目的・企業への影響を解説」 https://www.freee.co.jp/kb/kb-healthcare/corporate-tax2026/
- 日本経済新聞「防衛費確保へ所得税増税、2027年1月から開始 政府・与党」(2025年12月18日) https://www.nikkei.com/
- 東京新聞「防衛費のために2027年1月から所得税を増税 税率『1%』」(2025年12月19日) https://www.tokyo-np.co.jp/article/457253
- 中小企業庁「少額減価償却資産の特例」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/syougaku_shisan.html
- アンパサンド税理士法人「超速報!令和8年度(2026年度)税制改正大綱を徹底解説!」 https://ampersand-tax.jp/
※ 本記事の内容は、2025年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱に基づいています。今後の法案審議の過程で内容が変更される可能性がありますので、最新情報は財務省や国税庁のウェブサイトでご確認ください。
※ 具体的な税務処理については、税理士などの専門家にご相談ください。

