2026年度税制改正大綱が2025年12月19日に自民党税制調査会で取りまとめられ、その後、閣議決定されました。今回の改正では、住宅ローン控除や既存住宅リフォーム減税、相続税における不動産評価の見直しなどが盛り込まれ、不動産投資家にとって「取得・保有・出口(相続・売却)」の各フェーズに影響が出る内容となっています。
特に、省エネ性能の高い住宅や子育て世帯・若年層向けの優遇策が重視される一方、投資用マンションを利用した相続税対策については、評価方法の見直しにより節税余地が縮小する方向が示されています。不動産投資を検討するあなたにとって、この改正は「適切に使えば節税・キャッシュフロー改善につながるが、従来の相続税対策スキームには再検討が必要になる」両面を持つ改正と言えるでしょう。
本記事では、2026年度税制改正のうち、不動産投資家が押さえておくべきポイントを「取得・保有・相続・売却」の流れに沿って整理し、投資戦略の考え方を解説します。詳細な制度適用やシミュレーションは、必ず専門家への相談も併用してください。
1. 住宅ローン控除の見直しと不動産投資への影響
2026年度改正では、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)について、省エネ基準を満たした住宅や子育て世帯向けの取得を後押しする方向で、適用期間の延長や要件の見直しが盛り込まれています。ここでは、不動産投資家に関係が深いポイントに絞って整理します。
1-1. 面積要件・省エネ要件と「コンパクト物件」の活用
住宅ローン控除の対象となる床面積要件は、近年の改正で原則40㎡以上となっており、一定の所得要件等を満たした場合には、都市部のコンパクトな区分マンション等でも利用が可能です。2026年度改正でも、省エネ性能を満たす住宅や若年層・子育て世帯向けの住宅取得を支援する方向性が維持されています。
不動産投資家にとっては、次のような活用が考えられます。
- 自ら居住する物件を購入しつつ、将来の賃貸化も視野に入れた「自宅兼投資」戦略
- DINKS・子育て世帯・単身者など、明確なターゲットを意識した40㎡前後のコンパクト物件選定
- 省エネ・長期優良住宅など一定の認定を受けた物件を優先することで、ローン控除やその他の税制優遇と組み合わせやすくする
具体的な適用条件(床面積、所得上限、控除期間・率、借入限度額など)は、年度ごとに変わりうるため、国土交通省や国税庁の最新資料、金融機関のシミュレーションを必ず確認しましょう。
1-2. 子育て世帯・中古住宅優遇と「実需+投資」の組み合わせ
2026年度改正では、子育て世帯や若年層による住宅取得を支援するための枠組みが継続・見直しされ、中古住宅や既存住宅の活用も引き続き重視されています。認定長期優良住宅や一定の省エネ基準を満たす中古住宅については、借入限度額や控除期間で新築に近い扱いがなされるケースもあります。
投資家目線で見ると、
- 「築古+リノベ+認定取得」という流れを意識することで、中古物件でも制度上の優遇を受けやすくなる
- 子育て世帯向けの間取り・設備(ファミリータイプ、ワークスペース、防音性能など)を備えた物件は、入居安定性と税制優遇の両立が狙える
といった戦略につなげることができます。ただし、どの物件がどの認定・減税の対象になるかは個別審査となるため、事前に設計士・施工会社・自治体・金融機関と連携して計画を立てることが重要です。
2. 固定資産税・不動産取得税・リフォーム減税:保有コストの最適化
新築住宅や長期優良住宅、既存住宅のリフォームについては、固定資産税の減額措置や所得税のリフォーム促進税制など、各種優遇措置の適用期限延長が示されています。これは「新築一択」ではなく、「既存住宅ストックの活用」を重視する国の方針とも一致しています。
2-1. 新築住宅・長期優良住宅の固定資産税軽減
新築住宅(戸建て・マンション)については、一定期間、固定資産税の税額を一部減額する措置が継続されます。さらに、認定長期優良住宅のように性能の高い住宅では、一般住宅より有利な軽減を受けられるケースもあります。
投資家にとってのポイントは次の通りです。
- 新築投資では、竣工後の数年間、固定資産税負担が軽くなる期間を事業計画に織り込める
- 長期優良住宅などの認定を取得しておくと、減税期間や軽減率が有利になる場合があり、長期保有前提の投資と相性が良い
一方で、軽減が終了した後の固定資産税負担を過小評価すると、数年後にキャッシュフローが悪化するリスクがあります。事業計画では「軽減前・軽減後」の両パターンを試算しておきましょう。
2-2. 既存住宅リフォーム減税の延長と「築古×リノベ投資」
既存住宅についても、耐震・省エネ・バリアフリー・長期優良住宅化等のリフォームに対する所得税の特別控除や固定資産税の軽減措置が、2026年度以降も延長・見直しの上で継続される方向です。
築古物件の投資戦略としては、
- 仕入れ価格が相対的に低い築古物件を購入
- 耐震・省エネ・バリアフリー改修などを組み合わせたリノベーションを実施
- 条件を満たす場合、リフォーム減税や固定資産税の軽減を活用しつつ、賃料水準と入居ニーズを高める
といった「低取得コスト+税制優遇+賃料アップ」を組み合わせるモデルが有力です。リフォーム内容ごとに適用できる制度や上限額が異なるため、設計段階から税務とセットでプランニングすることが重要になります。
3. 相続税評価の見直し:投資用マンション対策の転機
2026年度税制改正大綱では、いわゆる「タワマン節税」を含む投資用マンションを利用した相続税対策への対応として、相続税評価方法の見直しが示されています。これにより、相続直前に投資用マンションを購入して評価額を抑えるようなスキームは、従来よりも節税効果が小さくなる可能性が高まっています。
3-1. 投資用マンションの評価が「時価に近づく」方向へ
従来、賃貸用マンションは、路線価や固定資産税評価額などをベースに評価されることが多く、市場価格(実際の購入価格)と相続税評価額の乖離を利用して節税するスキームが広く使われてきました。2026年度改正では、この乖離が大きいケース、とくに相続の直前に取得した賃貸用不動産などについて、評価が時価に近づくような見直しが検討されています。
具体的な計算方法や適用対象は、今後の政省令・通達などで詳細が示される予定ですが、少なくとも次のような点は意識すべきです。
- 相続直前に短期保有を前提として投資用マンションを取得するスキームは、リスクが高い
- 資産規模が大きい投資家ほど、相続税評価の見直しによる影響が出やすい
- 「不動産だけで相続税対策を完結させる」という発想から、「金融資産・保険・法人活用・贈与などを含めた総合的な承継設計」への転換が必要
3-2. 投資家が今見直すべきポイント
相続税評価見直しを踏まえると、投資家が取るべきアクションは次のようになります。
- 短期保有前提のタワーマンション購入などは慎重に再検討する
- 既に保有している物件について、「評価の見直しが入った場合の相続税額」を試算しておく
- 長期保有を前提とした優良物件(立地・構造・管理状態・賃貸需要に優れるもの)へのシフト
- 資産規模が大きい場合は、税理士・弁護士・不動産専門家と連携し、法人化や生前贈与を含めた承継計画を早めに策定
相続税対策としての不動産投資は「節税メリットを追う」のではなく、「本業としての投資・長期運用」と整合する形で設計することが、今後ますます重要になっていきます。
4. 買換え特例・空き家3000万円控除:出口戦略としての制度活用
出口戦略として有力なのが、居住用財産に関する各種特例です。2026年度改正後も、条件を満たせば引き続き活用可能な制度が多く、改正に伴う適用期限の延長や見直しも行われています。
4-1. 居住用財産の3,000万円特別控除・買換え特例
自宅(マイホーム)を売却した際の「居住用財産の3,000万円特別控除」は、引き続き多くの人が利用できる基本的な制度です。また、一定の要件のもとで、居住用財産の買換え特例なども引き続き活用することができます。
投資家にとっては、
- 「将来自宅として利用する前提で物件を取得 → 一定期間居住 → 売却時に3,000万円特別控除を検討」といったライフプランと投資を組み合わせた設計
- 家族構成や転勤の可能性なども踏まえ、「自宅の売却・買い替え」と「投資用物件の取得・売却」を統合して考える
といった視点が有効です。
4-2. 相続空き家の3,000万円特別控除と老朽化物件の整理
相続した空き家を売却した場合に適用される「相続空き家の3,000万円特別控除」も、期限の延長が行われ、一定の条件を満たせば2020年代後半まで活用できる見込みです。老朽化した実家や空き家を放置せず、売却・建て替え・賃貸化などを通じて有効活用する流れを後押しする制度と言えます。
不動産投資家としては、自分の投資物件だけでなく、
- 親の自宅・実家・相続予定の不動産
- 自治体の空き家対策や再生プロジェクト
なども視野に入れ、「相続空き家の3,000万円控除」を活用した老朽物件の整理・再投資を検討する価値があります。
5. 2026年以降の不動産投資戦略:改正をどう活かすか
2026年度税制改正は、省エネ・子育て支援・既存住宅の活用といった国の方針を強く反映しつつ、投資用マンションを使った過度な相続税対策にはブレーキをかける内容になっています。まとめると、不動産投資家にとっての戦略の方向性は次のようになります。
- 省エネ・長期優良住宅・認定中古住宅など、「性能+税制優遇」を兼ね備えた物件をポートフォリオに組み込む
- 新築・築古のいずれについても、「固定資産税・リフォーム減税・ローン控除」の組み合わせでキャッシュフローを改善する
- 相続税評価の見直しを前提に、「短期スキーム」から「長期保有・分散投資・総合的な相続対策」へと発想を切り替える
- 自分や家族のライフプラン(自宅の取得・住み替え・相続空き家の処理)と、投資としての不動産運用を一体で設計する
個々の物件・家族構成・所得状況によって、最適な制度の組み合わせや投資手法は大きく異なります。2026年は、不動産投資の前提となる税制が一段と「選別色」を強める年でもあるため、「チャンスとリスクの両方が大きいタイミング」と捉え、早めにポートフォリオと税務戦略を点検することをおすすめします。
より具体的なシミュレーションや、あなたの状況に合った戦略を知りたい場合は、税理士や不動産専門家への相談してみてください。
参考・出典
本記事の内容は、2026年度(令和8年度)税制改正大綱および関連公表資料等をもとに執筆しています。実際の適用にあたっては、最新の法令・通達・自治体の案内や、税理士等の専門家への確認を必ず行ってください。
主な参考資料・情報源(抜粋・順不同)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf - 国土交通省「令和8年度税制改正概要(住宅関連)」
https://www.mlit.go.jp/page/content/001975596.pdf - 国土交通省 報道発表「住宅ローン減税等の住宅取得等促進策に係る所要の措置」
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000241.html - 国土交通省 資料「住宅ローン減税」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html - 国土交通省 資料「住宅ローン減税等の住宅取得等促進策に係る所要の措置(PDF)」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001975750.pdf - リクルート系解説「2026年度税制改正で住宅購入はどう変わる?住宅ローン減税・固定資産税などの見直し」
https://finance.recruit.co.jp/article/n243/ - 東洋経済オンライン「住宅ローン減税は拡充、相続税対策は引き締め…2026年度『税制改正大綱』で変わる不動産購入の戦略」
- 不動産・住宅業界ニュースサイト「税制改正大綱の閣議決定受け概要を公表 ─ 国交省、住宅関連税制」
- 住宅ローン・不動産会社各社による2026年度税制改正解説記事(住宅ローン控除・リフォーム減税・固定資産税軽減等の概要)
- 税理士法人・コンサルティング会社等による2026年度税制改正大綱解説(相続税・投資用マンション評価見直し、不動産関連税制の整理)
※本記事は上記資料等をもとに、不動産投資家向けに内容を整理・解釈したものであり、各制度の最終的な内容・適用可否は、今後の政省令や通達、個別事情により異なる場合があります。最新情報については、必ず公式資料および専門家にてご確認ください。

