2026年5月11日現在、WTI原油先物は1バレル97.69ドルと、年初(60.28ドル)の約1.6倍に急騰しています。
2月28日に勃発した中東軍事衝突とホルムズ海峡の実質的な閉鎖が、2026年最大の価格変動要因となりました。
この記事では、2026年1月〜5月11日の月次データをもとに推移を整理したうえで、1年前(2025年5月)・5年前(2021年5月)の水準と比較し、「なぜ今この価格なのか」をわかりやすく解説します。
2026年のWTI原油先物価格の推移

2026年に入ると、WTI原油先物は年初から静かなスタートを切りました。しかし2月末の中東軍事衝突を境に価格は急騰し、わずか2〜3か月で約60%上昇するという異例の展開となりました。
| 月 | WTI価格(目安) | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 1月 | 60.28ドル | 年初。供給過剰懸念が継続し低水準でスタート |
| 2月 | 64.57ドル | 中東での軍事衝突が激化。月末にホルムズ海峡の実質閉鎖へ |
| 3月 | 91.16ドル(月平均) | 3/12にブレント原油が100ドル突破。WTI月平均も急騰 |
| 4月 | 約104ドル(推計) | 停戦交渉が進まず高値圏で推移。ブレントとのスプレッドが拡大 |
| 5月11日 | 97.69ドル | 停戦の脆弱性懸念で前週比−7%。ただし高水準を維持 |
ホルムズ海峡は世界の原油輸送の約20%(約2,000万バレル/日)が通過する要衝です。2月末の実質閉鎖以降、市場は供給途絶リスクを織り込み続け、WTIの52週高値は117.63ドル(ブレントは118ドル台)に達しました。
ポイント:年初は「供給過剰懸念」で低水準だったWTIが、2月末の地政学イベントを転機に3か月で+60%超急騰。5月に入り停戦期待から一服も、依然として高水準が続いています。
1年前(2025年)との比較

2025年は、WTI原油先物が年間を通じて下降トレンドをたどった年でした。年初の75.14ドルから年末には57.94ドルへと下落し、年平均は64.89ドルにとどまりました。
| 月 | 2025年(1年前) | 2026年(今年) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 75.14ドル | 60.28ドル | −14.86ドル |
| 2月 | 71.33ドル | 64.57ドル | −6.76ドル |
| 3月 | 67.82ドル | 91.16ドル | +23.34ドル |
| 4月 | 63.08ドル | 約104ドル | +約41ドル |
| 5月 | 61.03ドル | 97.69ドル | +36.66ドル(+60.1%) |
2025年5月の61.03ドルに対し、2026年5月11日は97.69ドルと、前年同月比で約60%高となっています。
2025年に原油が軟調だった主な理由:
- OPEC+の増産方針:段階的な増産再開を進め、供給が緩和
- 世界需要の伸び悩み:中国経済の回復鈍化
- 米ドル高:原油の割高感が需要を抑制
2026年の急騰は、これら2025年の抑制要因がすべて逆転したことを意味します。
5年前(2021年)との比較

5年前の2021年5月、WTI原油先物の価格は65.17ドルでした。当時はコロナ禍からの経済再開期にあたり、需要が急速に回復した局面です。
| 時点 | WTI価格(5月) | 2026年5月11日との差 |
|---|---|---|
| 5年前:2021年5月 | 65.17ドル | +32.52ドル(+49.9%) |
| 1年前:2025年5月 | 61.03ドル | +36.66ドル(+60.1%) |
| 現在:2026年5月11日 | 97.69ドル | — |
興味深いのは、2021年も2025年も5月時点の水準が60〜65ドル台と近いにもかかわらず、2026年は約98ドルと約50〜60%上乗せされている点です。
| 年 | 価格変動の主な背景 |
|---|---|
| 2021年 | コロナ経済再開で需要急回復。供給不足感が価格押し上げ |
| 2025年 | OPEC+増産+中国需要鈍化で下落基調 |
| 2026年 | ホルムズ海峡危機による供給リスクで急騰 |
「需要増」が主役だった2021年に対し、2026年は「地政学的な供給制約」が価格を押し上げているという質的な違いがあります。
価格急騰の主要因:4大要因を整理する

① 地政学リスク(最大の押し上げ要因)
2026年の価格急騰を引き起こした最大の要因です。2月28日の中東軍事衝突を受け、ペルシャ湾のホルムズ海峡が実質的に閉鎖状態となりました。同海峡はイラク・サウジアラビア・UAEなど主要産油国の出荷ルートであり、世界の原油輸送の約20%が通過します。
5月11日時点も米イランの停戦交渉は不安定な状態が続いており、市場は引き続き供給リスクを意識しています。
② OPEC+の生産政策
2026年第1四半期、OPEC+は増産再開を見送り、生産量を据え置く判断をしました。さらにホルムズ危機を受け、中東の産油国が生産量を大幅に削減。世界の供給量と需要量の差(余剰分)は極めて薄い水準となっています。
停戦が実現し中東産油国が増産に転じれば、価格は急落する可能性があります。
③ 世界石油需要
IEAは2026年の世界石油需要の伸びを+0.93 mb/dと予測。インドや東南アジアの成長が牽引しており、エネルギー転換の進行が想定より遅れていることも需要を下支えしています。
④ 米ドル相場と金融政策
原油はドル建てで取引されるため、ドル安になると相対的に原油が安くなり需要が増えます。FRBの利下げ観測はドルを弱める方向に働いており、原油価格の下支え要因のひとつとなっています。
まとめ:2026年原油価格を3行で整理
- 2026年WTI: 年初60.28ドル → 5月11日97.69ドル(+62%)。2月末のホルムズ海峡危機が転換点
- 1年前(2025年5月)比: +60.1%。2025年は下落基調だったため、落差は一層大きい
- 5年前(2021年5月)比: +49.9%。当時は需要回復、今回は供給リスクが主因という構造的違いがある
原油価格は今後の停戦交渉の行方とOPEC+の増産判断次第で大きく動く可能性があります。ガソリン代・電気代・輸入物価を通じて家計にも直結するため、中東情勢とエネルギー市場の動向を引き続き注視していきましょう。
参考資料
- U.S. Energy Information Administration (EIA) – Crude oil and petroleum product prices increased sharply in the first quarter of 2026
- 新電力ネット – 原油価格の推移(WTI/ブレント/ドバイ/OPECバスケット)
- Trading Economics – 原油価格チャート(2026年5月11日時点)
※価格データは各種公表資料・推計値を含みます。4月のWTI月平均は週次データからの推計です。投資判断の参考にする場合は最新情報をご確認ください。
最終更新:2026年5月11日
