2026年7月6日時点(直近の値は7月3日の終値ベース)で、WTI原油先物は約68.7ドル/バレル、ブレント原油先物は約71.9ドルと、2月末の中東供給ショック直前の「平時水準」まで完全に回帰しました。4月のピーク(WTI約108ドル、ブレント約128ドル)からはおよそ4割安の水準です。2月28日のホルムズ海峡封鎖で積み上がった「戦争プレミアム」は6月の停戦進展・海峡再開でほぼ全て剥落し、直近1週間はWTIが70ドル台前半から68ドル台へ小幅に水準を切り下げつつ落ち着きを取り戻しています。7月5日にはOPEC+が8月も5カ月連続の増産(日量18.8万バレル)を決定しましたが、市場の反応は限定的でした。本記事では、2026年の年初来の推移、直近1週間の値動き、1年前・5年前との比較を交え、原油価格の現在地と今後の見方を整理します。
本記事は市況スナップショットです。価格は記事公開時点の各種報道・取引所速報をもとにした概算値であり、リアルタイム値や確定値とは差異が生じる場合があります。ドバイ原油、1年前・5年前の比較値は概算・月間平均ベースを含みます。最終的な売買判断はご自身の責任でお願いいたします。
1. 2026年7月6日時点の原油先物価格サマリー

| 指標 | 価格(ドル/バレル) | 前週末比 | 4月ピーク比 |
|---|---|---|---|
| WTI原油先物 | 約68.7ドル | 約▲8ドル(▲10%) | ▲約39ドル(▲36%) |
| ブレント原油先物 | 約71.9ドル | 約▲8ドル(▲10%) | ▲約56ドル(▲44%) |
| ドバイ原油(概算) | 約70ドル | 約▲9ドル | ▲約59ドル |
WTI(West Texas Intermediate)は米国産原油、ブレントは北海産・欧州中東の指標、ドバイは中東渡しのアジア向け指標です。日本が輸入する中東産原油はドバイに連動するため、家計・産業への影響を見るうえではドバイ/ブレントの動向が重要になります。3指標そろって、2月末の供給ショック直前(WTIは60ドル台後半、ブレントは70ドル前後)の水準まで戻りました。市場の関心は「地政学プレミアムの巻き戻し」から、OPEC+の増産や世界需要といった「本来のファンダメンタルズ」へと移りつつあります。
2. 2026年年初来の推移:軟調スタート→戦争プレミアムで急騰→平時回帰

2026年の原油価格は、供給潤沢で軟調に始まった年初から、2月末の中東軍事衝突とホルムズ海峡封鎖を受けた歴史的急騰(ブレント一時128ドル)を経て、6〜7月は停戦進展と海峡再開による平時回帰の局面に入りました。値動きはおおむね4つの局面に整理できます。
- 第1局面(1〜2月中旬):供給は潤沢で需要も力強さを欠き、WTIは60ドル前後の軟調なスタート。
- 第2局面(2月28日〜4月上旬):中東での軍事衝突を発端にホルムズ海峡が事実上封鎖。世界最大級の供給途絶懸念で原油は急騰し、ブレントは4月2日に一時128ドル、WTIも108ドル前後のピークを付けました(2022年以来の高値)。
- 第3局面(4月〜5月):湾岸産油国の生産停止が続き高止まり。ブレントは5月中旬でも100ドル超と、年初来で大幅高を維持。
- 第4局面(5月末〜現在):米イランの暫定合意観測と停戦進展、海峡通航の再開で急落。WTIは5月29日の約88.9ドルから6月19日の76.6ドル、6月26日の約72ドル、そして7月3日の約68.8ドルへと段階的に水準を切り下げ、供給ショック前の水準に戻りました。
3. 直近1週間の値動き

| 日付 | WTI(ドル/バレル) | 主要材料 |
|---|---|---|
| 6月29日(月) | 約70.8 | 週初は海峡正常化の織り込みが一巡し70ドル台で小動き |
| 6月30日(火) | 約69.5 | 四半期末のポジション調整、供給不安の後退で軟化 |
| 7月1日(水) | 約68.6 | 米在庫・需要指標をにらみ68ドル台へ、平時水準を試す |
| 7月2日(木) | 約68.7 | OPEC+会合を控え様子見、狭いレンジでもみ合い |
| 7月3日(金) | 約68.8 | 米独立記念日の振替休日で薄商い、方向感に乏しく横ばい |
週を通じて、値動きは4月の急騰局面と比べ大きく沈静化し、WTIは68〜71ドルの狭いレンジで推移しました。ホルムズ海峡の通航正常化とイラン産原油の市場復帰観測がすでに価格に織り込まれ、戦争プレミアムの剥落は最終局面に入っています。週明けの7月5日にはOPEC+が8月の増産を決定しましたが、需給の緩みはおおむね想定内で、相場を大きく動かす材料にはなりませんでした(各日の値は取引所速報・各種報道をもとにした概算)。
4. 1年前・5年前との比較

| 時点 | WTI(ドル/バレル) | ブレント(ドル/バレル) | 当週比 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月(当週) | 約68.7 | 約71.9 | ― |
| 2025年7月(1年前・月平均概算) | 約67 | 約70 | +約2ドル |
| 2021年7月(5年前・月平均概算) | 約72 | 約74.5 | ▲約3ドル |
- 対1年前(+約3%):2025年7月は需要鈍化で軟調な相場が続いた月で、WTIは60ドル台後半で推移していました。当時とほぼ同水準まで戻ったことは、2026年の供給ショックの影響がほぼ完全に剥落したことを示します。
- 対5年前(▲約4%):2021年7月はコロナ禍からの需要回復途上で、OPEC+が大規模減産を段階的に縮小していた局面。当時よりむしろ数ドル安く、足元の60ドル台後半〜70ドル台前半は「供給潤沢・需要鈍化を映した平時のやや低めの均衡」に戻ったと捉えられます。
- ポイント:1年前とほぼ同水準、5年前をやや下回る水準まで正常化した一方、2026年4月のピーク(WTI約108ドル)からは約4割安。現在地は「歴史的な供給ショックが完全に巻き戻った局面」であり、価格の主導権は地政学から需給ファンダメンタルズへ移っています。
5. 当週の主な材料
弱気材料(売り材料)
- OPEC+の増産継続(7月5日に8月分として日量18.8万バレルの追加増産を決定、5カ月連続の増産)
- ホルムズ海峡の通航正常化とイラン産原油の市場復帰
- 米イラン停戦の維持(不安定ながら軍事エスカレーションは後退)
- 需要の鈍化(OPECは2026年の世界需要見通しを2会合連続で下方修正)
- ドル高・円安(ドル円162円前後)がドル建て商品の上値を抑制
強気材料(買い材料)
- 米イラン停戦の脆さ(正式合意は未確定で、再燃リスクがくすぶる)
- OPEC+の増産は「書類上の形式」との指摘もあり、実際の増産量は限定的
- OECD在庫の低水準が続き、需給バランスの緩衝余地は小さい
- 北半球の夏場のドライブシーズン・電力需要による季節的な需要下支え
- 米メキシコ湾岸のハリケーンシーズン入りによる生産停止リスク
6. 焦点:需給ファンダメンタルズへの回帰
戦争プレミアムがほぼ剥落した現在、原油価格の主導権は地政学から本来の需給バランスへと戻りました。当面の焦点は次の3点です。
- OPEC+の増産ペース:8月まで5カ月連続で増産を積み上げており、供給側の緩みが鮮明。ただし実際の増産量は割当を下回るとの見方もあり、「額面どおりの供給増」になるかが焦点です。
- 世界需要の底堅さ:OPECは2026年の需要見通しを連続で下方修正。中国の需要鈍化と世界景気の減速観測が上値を抑える一方、夏場の季節需要が下支えとなります。
- 地政学の残り火:米イラン停戦は維持されているものの正式合意には至っておらず、ホルムズ海峡やレバノン情勢の再燃は依然として上方リスクです。
地政学プレミアムが消えたことで、原油相場は「供給潤沢・需要鈍化」というファンダメンタルズが素直に反映されやすい局面に戻りつつあります。
7. 今後1〜2週間の見方
メインシナリオ:WTIは65〜73ドルのレンジを意識した推移。OPEC+の増産と需要鈍化が上値を抑える一方、在庫の低水準や停戦の脆さが下値を支え、方向感の乏しいレンジ相場が続くと見られます。
上方リスク
– 米イラン停戦の崩れ、またはホルムズ海峡での緊張再燃
– レバノン情勢など中東地政学の再燃
– 米メキシコ湾岸のハリケーンによる生産・製油所の停止
– 夏場の需要が想定を上回る強さを見せる展開
下方リスク
– OPEC+のさらなる増産上乗せと実際の供給増の加速
– 中国・世界の需要見通しの一段の下方修正
– 米景気減速観測やドル高の進行
– 米原油在庫の想定を上回る積み増し
注目イベント:8月以降のOPEC+の増産方針、毎週水曜の米EIA在庫統計、月次のOPEC/IEA需給見通し、米イラン協議の進展。
8. 日本経済・家計への影響
レギュラーガソリンの全国平均は6月末調査時点で1リットル169.8円前後(資源エネルギー庁/石油情報センター)で推移しています。原油安の小売価格への波及には数週間のラグがあり、4月以降の急落分が本格的に反映されるのはこれからです。今後は徐々に店頭価格の低下圧力が強まる見通しです。
ただしドル円は162円前後と歴史的な円安水準にあり、ドル建て原油の下落効果は円換算で大きく相殺されています。政府の燃料油価格激変緩和(定額補助、足元は縮小方向)も価格の下支え要因です。電気・ガス料金は燃料費調整制度のラグ(おおむね3カ月遅れ)で反映されるため、家計の体感的な負担軽減は夏から秋にかけて徐々に表れる見通しです。
夏場の電力需要期に向けては、原油・LNG安が燃料費調整を通じて電気料金の引き下げに寄与する一方、円安と再生可能エネルギー賦課金が一部相殺する構図が予想されます。原油ドル建て価格の下落を家計が実感するには、円安の一服がカギとなります。
9. まとめ
- 2026年7月6日時点(7月3日終値ベース)のWTIは約68.7ドル、ブレントは約71.9ドルで、2月末の供給ショック直前の平時水準に完全に回帰。直近1週間は68〜71ドルの狭いレンジで落ち着いた。
- 2026年は軟調スタート→2月末のホルムズ海峡封鎖で急騰(ブレント一時128ドル)→6〜7月は停戦進展・海峡再開で平時回帰、という大きな弧を描いた。4月ピークからは約4割安。
- 1年前(2025年7月)とほぼ同水準、5年前(2021年7月)をやや下回る水準まで正常化。戦争プレミアムはほぼ完全に剥落した。
- 7月5日にOPEC+が8月も5カ月連続の増産(日量18.8万バレル)を決定。価格の主導権は地政学から需給ファンダメンタルズへ移り、今後1〜2週間はWTI65〜73ドルのレンジ相場を想定。
- 日本のガソリンは169.8円前後。原油安の波及はこれからだが、162円台の円安で恩恵は大きく相殺され、家計の体感的軽減は夏から秋に。
10. 更新履歴
- 第1稿投稿 2026年7月6日(記事コンテンツアップ)










