最終更新: 2026年10月06日
「退職金からいくら税金が引かれるの?」「手取りはいくら残る?」と気になっている人は多いでしょう。退職金は他の所得と分けて課税され、勤続年数に応じた退職所得控除と2分の1課税により、税負担が軽くなる仕組みです。この記事では、国税庁の計算式と所得税の速算表、住民税10%をもとに、勤続年数別の控除額早見表と3つの計算例を示し、厚生労働省の調査による平均退職給付額や2026年(令和8年)からの改正点も紹介します。
この記事の結論
- 退職金の税金は「控除→2分の1→税率」の順で計算
- 勤続30年なら1,500万円まで所得税・住民税はかからない
- 2,000万円・勤続30年の税額は合計約40.6万円
この記事の目次
- 退職金の計算の結論:勤続年数で非課税枠が決まる
- 退職金の税金の計算式と公的パラメータ(2026年)
- 勤続年数別の退職所得控除額の早見表
- 退職金の税金の計算例3パターン
- 退職金の計算で注意したい点(2026年の改正を含む)
- まとめ:退職金の計算は控除額の確認から
- よくある質問
- 出典・参考資料
退職金の計算の結論:勤続年数で非課税枠が決まる
退職金の税金は、①退職金の額から退職所得控除額を引き、②その残りを2分の1にした「課税退職所得金額」に、③所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の税率をかけて計算します。退職所得控除額は勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。
そのため、退職金が退職所得控除額以下なら税金はかかりません。たとえば勤続30年なら控除額は1,500万円、勤続38年なら2,060万円です。勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げるため、10年2か月勤めた人は11年として計算します。
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
退職金の税金の計算式と公的パラメータ(2026年)
国税庁の計算式は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額」です。ただし役員等勤続年数が5年以下の役員等が受ける特定役員退職手当等は2分の1計算がなく、役員以外で勤続5年以下の短期退職手当等は控除後の額のうち300万円を超える部分に2分の1計算が適用されません。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は控除額に100万円が加算されます。
所得税と復興特別所得税は下の速算表で「(課税退職所得金額×税率−控除額)×102.1%」と計算します。令和9年以後は防衛特別所得税が加わりますが、復興特別所得税との合計税率に変更はなく、源泉徴収税額の計算方法は変わりません。住民税は課税退職所得金額に道府県民税(都民税)4%と市町村民税6%の計10%をかけ、退職金の支払い時に特別徴収されます。
| 課税退職所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) | 税額 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 | A×5%×102.1% |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 | (A×10%−97,500円)×102.1% |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 | (A×20%−427,500円)×102.1% |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 | (A×23%−636,000円)×102.1% |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | (A×33%−1,536,000円)×102.1% |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | (A×40%−2,796,000円)×102.1% |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | (A×45%−4,796,000円)×102.1% |
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収、別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表、個人住民税(暮らしと税金)
勤続年数別の退職所得控除額の早見表
下の表は、一般の退職手当等(特定役員退職手当等・短期退職手当等以外)の退職所得控除額です。退職金がこの金額以下であれば、課税退職所得金額はゼロになり、所得税・住民税はかかりません。控除額を超えた部分も2分の1にしてから税率をかけるため、超過額がそのまま課税されるわけではありません。
| 勤続年数 | 計算 | 退職所得控除額 |
|---|---|---|
| 5年 | 40万円×5年 | 200万円 |
| 10年 | 40万円×10年 | 400万円 |
| 15年 | 40万円×15年 | 600万円 |
| 20年 | 40万円×20年 | 800万円 |
| 25年 | 800万円+70万円×5年 | 1,150万円 |
| 30年 | 800万円+70万円×10年 | 1,500万円 |
| 35年 | 800万円+70万円×15年 | 1,850万円 |
| 38年 | 800万円+70万円×18年 | 2,060万円 |
| 40年 | 800万円+70万円×20年 | 2,200万円 |
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
退職金の税金の計算例3パターン
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査(退職給付を調べた最新年版)では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1,896万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1,682万円、高校卒(現業職)で1,183万円でした。これを参考に、3つのケースを「退職所得の受給に関する申告書」を提出した前提で計算します。
A(2,000万円・勤続30年)は課税退職所得250万円に対し、所得税等が(250万円×10%−97,500円)×102.1%=155,702円、住民税が25万円です。B(1,896万円・勤続38年)は控除額2,060万円を下回るため税額はゼロです。C(役員等勤続5年・3,000万円)は特定役員退職手当等となり、2分の1計算がないため税負担が大きくなります。
| 項目 | A:2,000万円・勤続30年 | B:1,896万円・勤続38年 | C:役員5年・3,000万円 |
|---|---|---|---|
| 退職所得控除額 | 1,500万円 | 2,060万円 | 200万円 |
| 課税退職所得金額 | (2,000万−1,500万)×1/2=250万円 | 0円 | 3,000万−200万=2,800万円(1/2なし) |
| 所得税+復興特別所得税 | 155,702円 | 0円 | (2,800万×40%−2,796,000円)×102.1%=8,580,484円 |
| 住民税(10%) | 250,000円 | 0円 | 2,800,000円 |
| 税額合計 | 405,702円 | 0円 | 11,380,484円 |
| 手取り額 | 19,594,298円 | 18,960,000円 | 18,619,516円 |
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収、別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表、個人住民税(暮らしと税金)、平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について、令和5年就労条件総合調査の概況 4 退職給付(一時金・年金)の支給実態
退職金の計算で注意したい点(2026年の改正を含む)
前年以前に退職金を受け取ったことがある場合は、勤続期間の重複期間に対応する控除額が差し引かれます。令和8年1月1日以後に確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の老齢給付金を一時金で受け取った場合、その後に受け取る退職手当等との重複期間を調整する対象が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に広がりました。反対に、退職金を先に受け取り、その後の年にDC一時金を受け取る場合は、前年以前19年内に受け取った退職手当等が調整の対象です。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、退職金の支払額に一律20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。申告書を提出していれば源泉徴収で課税関係が完結し、原則として確定申告は不要です。なお、死亡退職で相続税の対象となる退職手当等には所得税はかかりません。
- 申告書の提出漏れ:支払額×20.42%が源泉徴収される
- 勤続年数の端数:1年未満は1年に切り上げ(重複期間の端数は切り捨て)
- 役員等で勤続5年以下:2分の1計算の対象外
- DC一時金との受け取り順:令和8年以後は重複期間の判定期間が9年内に
- 住民税:退職した年の1月1日の住所地で課税
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収、平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について
まとめ:退職金の計算は控除額の確認から
退職金の税金は、勤続年数で決まる退職所得控除額を差し引き、2分の1にした額に所得税の速算表と住民税10%を当てはめて計算します。勤続30年なら1,500万円、38年なら2,060万円まで非課税で、2,000万円・勤続30年の税額は合計405,702円です。役員等の短期勤続や、2026年からのDC一時金との重複期間調整には注意し、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しましょう。
出典: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、No.2732 退職手当等に対する源泉徴収、別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表
よくある質問
Q. 退職金の計算で勤続年数に端数があるときは?
A. 勤続期間に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。たとえば勤続10年2か月なら11年として、退職所得控除額は40万円×11年=440万円です。一方、前の退職金との重複期間の年数に1年未満の端数があるときは切り捨てます。
Q. 退職金2,000万円の税金はいくらですか?
A. 勤続30年の一般の退職金なら、控除額1,500万円を引いた500万円の2分の1、250万円が課税退職所得です。所得税等は155,702円、住民税は25万円で、合計405,702円となり、手取りは19,594,298円です。勤続年数が変われば税額も変わります。
Q. 退職金を受け取ったら確定申告は必要ですか?
A. 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、支払者が税額を計算して源泉徴収するため、原則として確定申告は不要です。提出していない場合は20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算します。医療費控除などを受けるために申告する場合は退職所得も記載します。
Q. 退職金の平均額はいくらですか?
A. 厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職給付額(一時金・年金の合計)は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1,896万円、高校卒(現業職)で1,183万円でした。
Q. iDeCoの一時金と退職金はどちらを先に受け取ると有利ですか?
A. 令和8年1月1日以後にDC一時金を先に受け取ると、その後9年内に受け取る退職手当等との重複期間が控除額の調整対象になります。改正前は4年内でした。受け取り時期で控除額が変わるため、国税庁の計算方法で事前に試算しましょう。
出典・参考資料
- No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁、2026-10-06閲覧)
- No.2732 退職手当等に対する源泉徴収(国税庁、2026-10-06閲覧)
- 別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表(国税庁、2026-10-06閲覧)
- 個人住民税(暮らしと税金)(東京都主税局、2026-10-06閲覧)
- 平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について(総務省、2026-10-06閲覧)
- 令和5年就労条件総合調査の概況 4 退職給付(一時金・年金)の支給実態(厚生労働省、2026-10-06閲覧)
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