2026年の原油先物価格は、年初こそ前年の供給過剰を引きずって低位でスタートしたものの、2月末の中東における軍事行動とホルムズ海峡の航行停止を契機に急騰し、3月末にはブレントが年初来高値の118ドル/バレルに到達しました。1年前(2025年)の下落基調、5年前(2021年)のコロナ明け需要回復局面と比べ、2026年の相場は「地政学ドリブンの急反発」という明確な構造変化を示しています。本記事では、WTI(NYMEX)とブレント(ICE)の両指標について、2026年1月〜4月の価格推移を事実ベースで整理し、1年前・5年前との比較、価格を動かした主要要因、今後の見通しを図解とともに解説します。
2026年 原油先物価格サマリー

2026年4月20日時点のWTIは88.85ドル/バレル、ブレントは95.42ドル/バレル。年初来ではWTIが+22.5%、ブレントが+56.4%の上昇となっており、特にブレントの上昇幅が目立ちます。年初来の高値はブレントで118ドル(3月31日終値)、安値は61ドル(1月初旬)。前年同期比(YoY)はブレントで+41.8%、5年前(2021年同期)比では+46.5%と、地政学ショックを反映した高い水準にあります。ブレント-WTIスプレッドは3月末の25ドルまで拡大した後、4月には約6.6ドルまで縮小しました。EIAの短期エネルギー見通し(STEO、2026年4月)では、2026年通年のブレント平均は96ドル/バレル、2Qにピークの115ドルに到達する想定となっています。
2026年1月〜4月の価格推移

2026年初頭のブレントは61ドル/バレルとなる一方、中東リスクのプレミアムを織り込みはじめた2月初旬には72ドルまで上昇。2月28日、米・イスラエルによるイランへの軍事攻撃が発生し、ホルムズ海峡が事実上の閉鎖状態に入ったことが急騰の引き金となりました。3月12日にはブレントが100ドルの節目を突破、3月末には118ドルまで到達。WTIも同期間で約93ドルまで上昇しましたが、米国の潤沢な在庫と戦略石油備蓄(SPR)放出計画により、ブレントとの乖離が拡大しました。4月17日にイラン外相がホルムズ海峡の再開を発表すると、ブレントは96ドル近辺まで軟化。しかし直後の再燃観測で4月20日には再び90ドル台後半に戻すなど、ボラティリティの高い展開が続いています。EIA公表のQ1 2026平均は、WTIが72.74ドル、ブレントが81ドルとされています。
1年前(2025年)との比較

2025年は一貫した下落基調の年でした。EIAの年次レビューによれば、ブレントの月次平均価格は1月の79ドル(年間高値)から12月の63ドル(年間低値)へと低下し、年間平均は69ドル/バレル。背景は世界的な供給過剰と緩やかな需要鈍化でした。2026年1月のブレント平均(約64ドル)は2025年1月比で約19%下回る水準からのスタートでしたが、2月以降は地政学ショックで一気に上昇し、3月には前年同月比+43%、4月には+41.8%へと転換。Fortuneの2026年4月17日付レポートによると、同日のブレント終値96.18ドルは、2025年4月16日の67.82ドルと比べて+41.81%の上昇となっています。2025年に市場を支配した「供給過剰ストーリー」は、わずか2〜3か月で「供給ショックストーリー」に置き換わりました。
5年前(2021年)との比較

5年前の2021年Q1は、新型コロナウイルスのパンデミックからの需要回復が本格化した時期です。WTIの月次平均は1月52ドル、2月59ドル、3月62ドル、4月62ドル、ブレントはそれぞれ55ドル、62ドル、66ドル、65ドルでした。2021年の年間ブレント平均は約71ドル。2026年の同じ4カ月と比べると、ブレント4月平均で65ドル→96ドル(+46%)、WTI4月平均で62ドル→85ドル(+37%)の水準に上昇しています。この5年間で、原油価格はコロナ復興の回復期→ロシア侵攻による供給ショック→2023〜25年の正常化・過剰供給→2026年の中東戦争ショックと、大きく4つの相場局面を経てきました。2026年の価格水準は、2021年の復興期より明確に高いレンジに固定されており、世界のエネルギー供給が構造的に脆弱化していることを示しています。
2026年の価格を動かした主要要因

2026年の価格変動は、圧倒的に「供給サイドの地政学」が主導しています。押し上げ要因の筆頭はホルムズ海峡の閉鎖で、世界の海上原油取引の約20%が通航する要衝が一時的に機能停止したことが、ブレントの急騰を招きました。2月28日の軍事行動、イラク・サウジアラビア・UAEによる一時的な生産停止、OPEC+による増産凍結(2025年11月決定をQ1に再確認)もすべて押し上げ方向に作用。一方、米国は戦略石油備蓄(SPR)の放出とシェール増産で供給緩衝を提供し、潤沢な在庫が特にWTIの上昇を抑制しました。需要サイドは中国の回復・夏場前の季節需要が支援材料となる一方、世界景気減速懸念、ドル高、EV普及といった構造要因が緩やかな下押しとして作用しています。なおOPEC+は3月、206,000バレル/日の小幅増産で合意していますが、実際の供給は軍事衝突による強制的な減産に支配されている状態です。
今後の見通しとリスクシナリオ

EIAの2026年4月STEOによれば、ブレントは2Qに115ドルでピークを付けた後、3Qに91ドル、4Qに88ドルへと緩やかに低下し、2026年通年平均は96ドルが中心シナリオです。2027年は供給ショックの緩和を織り込み、76ドルへ低下する見立てとなっています。上振れシナリオは中東停戦の崩壊・再衝突で、その場合Q2中に120ドル超の再試があり得ます。下振れシナリオは停戦の安定化に加え、中国景気の失速、ドル高加速、OPEC+の大幅増産が重なった場合で、Q3〜Q4に70ドル台前半まで下落する可能性もあります。ウォッチポイントは、①中東停戦の持続性、②ホルムズ海峡の航行状況、③6月のOPEC+会合、④米国SPR放出の規模、⑤中国PMI・製造業指標、⑥ドル指数(DXY)、⑦EIAの週次在庫統計(毎週水曜発表)の7点。事実ベースでは、2026年の相場は「高値圏での地政学ボラティリティ」が当面のメインテーマと位置付けられます。
出典・免責事項
- U.S. Energy Information Administration(EIA)「Short-Term Energy Outlook」2026年4月版
- EIA「Crude oil and petroleum product prices increased sharply in the first quarter of 2026」
- EIA「Crude oil prices fell in 2025 amid oversupply」
- Fortune「Current price of oil as of April 17, 2026」
- Trading Economics — Crude Oil / Brent Crude Oil 価格ページ
- CNBC, Reuters, OilPrice.com による OPEC+ および中東情勢の報道(2026年Q1)
本記事に記載した価格・指標値は、公開情報に基づく 2026 年 4 月 21 日時点のまとめであり、正確性を保証するものではありません。原油先物は極めてボラティリティが高く、価格は短時間で大きく変動します。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、投資勧誘や特定の投資判断を推奨するものではありません。実際の投資判断・取引は、ご自身の責任において最新の公式データをご確認のうえ行ってください。

